ファインバブルとは?
ファインバブルの歴史と定義
気泡は古来から極めて身近にあり、自然界では海、河川、温泉、昆虫、植物などをよく観察すると見つけられます。その多様な性質を生かした製品は飲料、洗剤、材料など数えきれない種類に及びます。さらに、ガス吸収、浮選、微生物培養、養殖、発電、洗浄などの技術にも応用されてきました。すべての注目された現象や科学技術のなかで、気泡は気泡自身が最終的な製品あるいは目的となることは少なく、気泡の生成や存在が寄与した結果に大きな関心が集まることが通常でした。そのためすべての「気泡」を網羅した体系的な分類もなされていませんでした。
そこで改めて「気泡」の定義を考えてみると、広い意味では「気泡」とは「気体以外により囲まれた気体からなる閉じた空間」です。気泡表面に接する相で分類すると、液体に完全に囲まれている「浮遊性気泡」、一部が固体に接して残りは液に接している「付着性気泡」、固体膜に完全に囲まれている「中空粒子」に分類され、気泡を囲む固相が連続相の場合は「空隙」と呼んで区別することがあります。
さらにそれぞれ分類された気泡についてもそのサイズや内包気体などよって接頭語がつけられた呼称が命名されていることがあります。
従来、気泡はそのサイズによって明確には区別はされていませんでした。それは気泡が寄与するさまざまな性質の多くは、気泡サイズよりも気泡内の気体や気泡周囲の物質の性質の影響の方が大きいためでした。また、気泡のサイズを人為的かつ容易に縮小できる簡便な機器や市販装置もありませんでした。
しかし2000年頃に広島でのカキ養殖に微細な気泡を散気することでカキの生育を促進させた成果が新聞で報道され、その際に「細かい気泡」を「マイクロバブル」と呼んだことからこの呼称が定着しました。マイクロバブルは他にもホタテや真珠など水産養殖業、農業、臨床医療、食品工業、化学工業などにも応用され、その製造法の多様化や改善とともに普及がすすみました。また学術的にも研究が進み、多数の基礎研究や応用研究の成果が発表されました。
さらに2007年頃にマイクロバブルをさらに微細化した「ナノバブル」とナノバブルによる有害物質の分解事例が新聞で注目されました。その後も臨床医療や植物栽培などの分野での成果が報告されました。ここで「バブル(気泡)」の接頭語として用いられている「マイクロ」や「ナノ」はそれぞれ本来の「百万分の1」や「10億分の1」と意味ではなく「微細な」および「極微細な」の程度の呼称であり、使用者によって定義や解釈が異なることが頻繁にありました。
こうした事情から日本市場での「マイクロバブル」や「ナノバブル」を使用した製品や技術の普及・拡大とともに、これらの名称や定義の迅速な国際標準化が必要になり、2013年に国際標準化機構(ISO)(本部:ジュネーブ(スイス))にて「ファインバブル技術専門委員会」が設立され、これらの“微細な気泡”の定義や規格化が検討されています。ここで世界各国からの代表者による合議により、球相当直径が1マイクロメートル未満の気泡を「ファインバブル」と呼び、その他の気泡とは区別されました。さらにその内訳として、直径が1~100マイクロメートルの気泡を「マイクロバブル」、直径が1マイクロメートル未満の気泡を「ウルトラファインバブル」と呼ぶことで統一されることになりました。
マイクロバブルとウルトラファインバブルの明確な差は、ウルトラファインバブルでは可視光を散乱しないため肉眼では直接観察できず、マイクロバブルでは白濁により存在を確認できる点にあります。
以上のように日本発の「マイクロバブル」や「ナノバブル」は、「ファインバブル(ウルトラファインバブル)」として整理されました。